グローバルな大都市のクアラルンプールを旅して、街づくりにおけるグローバルとローカルのバランスについて感じたことを書いています。
(1)クアラルンプールの旅にあたって
今はASEANの国々を訪問することを目標にしている。これまで、タイ、フィリピン、ベトナム、シンガポールには行ったことがあり、今回のマレーシアで5カ国目。残りはインドネシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ブルネイの5カ国になる。
ブログを始めてから、記録するのに一所懸命になり過ぎて、旅自体の楽しみが減ってしまっていることに気付いた。
一つ一つを記録するんじゃなくて、今回からは、気づいたことだけをメモしたり写真撮影することにした。
(2)街の様子
クアラルンプールの中心部は完全に先進国だ。
マレーシアは1人当たりGDPがクアラルンプールだけ突出していて、日本円で300万円近い。
日本全体では1人当たりGDPは420万円だけど、これは東京・大阪を含む平均。クアラルンプールは日本の地方の中心都市と同じレベルだろう。
ただ、物価は安い。綺麗なショッピングセンターとかコンビニは日本の50-80%ぐらい、ローカルの市場に行くと20-50%ぐらいの感覚。クアラルンプールと地方の格差が大きいので、物価は地方との平均になっているのだろう。普段の生活だけなら住居費が高い東京の庶民より豊かな生活をしているかも。電子マネーを使っている人は見かけなかった。みんな現金を使っていた。物価は、今は日本人には安く感じるけど、イオンとかのショッピングセンターは、あと10年も経たないうちに大阪より高くなりそうな気がした。
そこら中でビルが建てられている。経済成長の勢いを感じた。
街中では電線が少ない。電線だらけの日本より進んでいると感じた。
街の中には、やたら大型モニターがある。LEDの価格が安いのか、こういうのが好きな国民性なのだろうか。
街のあちこちに国旗が掲揚されていた。アメリカと同じで様々な人種が暮らす国では国家に対するアイデンティティを高める必要性があるのかもしれない。
(3)交通
*自転車/バイク
街中では全く自転車を見かけなかった。バイクも少ない。走っている割合は大阪と同じぐらいだ。
*自動車
車は中心部では全くクラクションを鳴らさないし、日本並みに丁寧な運転をする。下町っぽいところは少し運転も荒くクラクションも多少鳴らす。走っている車は日本車かマレーシアのMYVIという車が多い。ベトナムと違って韓国車は見かけなかった。ベンツやBMWのような高級車も多かった。
*鉄道
駅や空港の案内標識が、とても分かりにくい。特に駅の入口が全然わからない。いろんな街に行ったけど、これだけ迷ったのは始めてだ。多分、あまり外部から来る人のことを考えずに街づくりがされている。鉄道は乗ってしまえば東京・大阪や他国の大都市と同じでとても便利だった。
*ライドシェア
ライドシェアサービスのグラブが使えた。約15分の乗車だと10リンギットぐらい(約270円)が多かった。ただ、運転手はカーナビを使っても道に迷う人が多かった。仕方ないのでgoogleマップを見ながら道案内をした。
*路線バス
1回だけ路線バスに乗ったけど鉄道とは客層が全然違っていた。観光客が乗ることなどなさそうで、ジロジロ見られた。運転も荒く乗り心地も悪かった。
(4)行ったところ
写真撮影する観光客がたくさんいた。
こういうランドマーク的な建物が都市の中心にあるのはいいなぁと思う。
*ホテル近くを散策
食堂はマレー料理、中華料理、インド料理が混在。コンビニは、セブンイレブンとファミリーマートがあった。地元資本のコンビニも多かった。個人商店的な店はなし。コンビニの店員がスマホで松田聖子の「あなたに逢いたくて」をかけて日本語で歌っていた。
*マレーシア国立博物館
建物は立派だけど展示は今ひとつ。映像もなかった。当たり前だけど東南アジアといっても国が違えば文化はずいぶんと違う。戦勝国のベトナムと違い国威啓発的な展示は少ない。
マレーシアは古代から栄えていたようだが、食べ物に困らないので、それなりに暮らせるため創意工夫の概念が根付かなかったのかもしれない。それと暑い国は感染症の影響で大きな文明ができなかったのだろう。
*プラネタリウム ネガラ
偉い人に「とりあえず宇宙に関する展示しろ」と命令されて作られている感じの博物館。そもそも科学者が展示を考えていないし、改善される様子もなかった。
警察の制服とか装備、拳銃とか展示されていた。ここも展示が今ひとつ。係員の人はスマホで動画見ていた。
一ヶ所だけ映像の部屋があった。
*イスラム美術博物館
イスラム教のモスク模型、経典、装飾品などが展示されていた。その美しさに圧倒された。淡々と展示されてあるのだが、とても美しく迫力もある博物館だった。これだけ迫力のある博物館は珍しい。他は今ひとつの博物館が多かったけど、ここは行く価値が高い。
*国立モスク
入口で女性は紫色の服を必ず着ないといけないようになっていた。観光客の人はコスプレ気分でみんな喜んで写真撮影していた。「ハリーポッターみたい」と言ってる人もいた。
いつもの抹茶フラペチーノを注文。
18.55リンギット(約496円)。
駅前のショッピングセンターの中の店なので外国人観光客が多い。他のところはみんなつまらなさそうに働いている人が多いけど、ここのスタッフは楽しそうにしていた。店内はやっぱりMacBookで仕事している人がいた。1人か2人で来ている人が多い。会話の声はあまり聞こえない。クアラルンプールの人は日本と同じで小さい声で話す。店は静かだけどBGMの音量が大きかった。
*国立繊維博物館
マレーシアの繊維の歴史や装飾品を展示していた。こんなに暑い場所なのに、伝統的な衣装は、暑そうな服が多かったのは不思議に感じた。やっぱり権威を示すには重厚な衣装が必要なのだろうか。ここもやっつけ仕事で展示している感じのところだった。この点は今まで行った国々とは大きく違うところだった。
* ジャラン・アローのナイトマーケット
食べ物だけの市場で服や雑貨は売っていなかった。中華料理とタイ料理が多かったのは意外だった。
*マッサージ
別に疲れていなかったけど、どこの都市でも行っているので比較のために行ってみた。30分のフットマッサージで30リンギット(約810円)。安いけど、あんまり気持ち良くなかった。軽くさすっている感じ。色んな国に行ったけど、やっぱりマッサージは大阪の下町が一番コスパがいい感じがする。
*繁華街「ブキッ・ビンタン」
若者と外国人観光客ばかりだった。ストリートミュージシャンがいたり、インスタスポットがあったり、いかにも繁華街という感じのところだった。クアラルンプールには在留邦人が1万人もいるので、当たり前だけど日本人も沢山いた。色んな文化を取り入れすぎて、無国籍な感じの街だった。
*バトゥ洞窟
ヒンドゥー教の寺院。階段を登るのは大変だったけど、見ごたえのある場所だった。外国人観光客ばかりだけど、意外にもイスラム教の人もちらほら来ていた。みんなスマホで写真撮影に必死でじっくり見ている人は少なかった。
クアラルンプールには大きなイスラム教のモスクがあり、電車の中からは仏教の寺院も見えたし、大きなキリスト教の教会もあった。様々な宗教、人種、文化が共存している街だった。
*ナガラ銀行博物館
ナガラ銀行の歴史、マレーシアの金融の歴史、世界のお札の紹介などがあった。施設は立派だったけど展示は今ひとつ。映像は所々にあった。
*セントラルマーケット付近
セントラルマーケットは昔ながらの市場のようだが、完全に観光客向けになっている。市場付近は個人商店や商店街も沢山あってアジアっぽい雰囲気だった。そこは物価がめちゃくちゃ安かった。Tシャツとかが5リンギット(140円)ぐらいで売っていた。外国人観光客だらけだった。
*電話博物館
古くは壁画から情報伝達に関する歴史とか、通信の歴史を紹介してあった。小さいながらなかなか良い展示だった。
*ホステル ドームズKL2
空港に向かう前に3時間だけホステルで休憩した。深夜便で帰るときには夕方に少しベットで休憩すると帰国の翌日の疲れ方が全然違うからだ。料金は11.97リンギット(317円)。これは1泊の料金でスタバのドリンクより安かった。クアラルンプールは他の物価に比べて鉄道/バスの運賃&宿代が格安だった。休憩中は2時間ぐらいスコールが降っていたので、ちょうどよかった。
(5)マレーシアの社会
クアラルンプールでは、店のスタッフは楽しくなさそうに働いている人が多かった。掃除専門の仕事人が多く、あちこちで清掃しているので中心部の街や施設の中は綺麗だった。子どもを連れて、あやしながら働いている人もいた。完全にエグゼクティブとワーカーが分かれている社会のようだ。ワーカーは決められたこと以外は一切していないようだった。
繁華街の若者は楽しそうだったけど、他の場所では楽しそうにしている人が少なく感じた。そこはタイ、フィリピン、ベトナムとは違う感じがする。その理由が日本のように社会が抑圧的なのか、経済発展すると不機嫌な人が増えるのか、わからないけど。
機械や自動車が普及した工業化の時代には日本型組織は大成功したけど、これからのAI&ロボットが普及する時代には、猛烈に教育されたエリートが引っ張るトップダウンの国と日本のように全体レベルを平均以上にしてボトムアップで運営する国とで、どちらが栄えていくのだろうか。
トップダウンの組織は動きは早いけど、方向を誤ると現場で改善できない欠点も多々あることをマレーシアで感じた。
それでも、これからは、その欠点でさえAIやロボットが補えるようになるだろう。やっぱりトップダウンの国の方が経済的には栄えていくかもしれない。でも、そこで生きている人達が幸せかどうかは別の問題だろうけど。
(7)総括
いつもの旅行では、航空券はスカイスキャナー、ホテルはbooking.com で予約するが、今回の旅行では、初めてエクスペディアで航空券とホテルのセットで予約した。
結果的には、飛行機は過去最高によくて、ホテルは過去最低のボロさだった。
マレーシア航空のエアバスA350-900はとても乗り心地の良い飛行機だった。隣が空いていたからかもしれないが、JALのボーイング787より良かった。よく搭乗するLCCはエアバスA320かボーイング737が多いけど、やっぱり大きい飛行機だと乗り心地がいい。
ホテルはびっくりするぐらいボロかった。セット予約の時にレビューも見ずに写真1枚だけでポチっとしてしまったけど、後から検索したら1泊1,500円ぐらいのボロ宿だった。テレビすら置いていない。以前に泊まった香港の重慶飯店よりボロかった。
クアラルンプールは7,000円ぐらいで、かなり良いホテルに泊まれるようだったので、もったいないことをしてしまった。
すでに世界の都市ランキングではクアラルンプール(49位)は大阪(50位)を上回っているし、そこらじゅうで新たらしいビルができていて発展しそうなので、さらにランキングを上げていくんじゃないかと感じた。
クアラルンプールは発展していて便利な街だけど、逆に無国籍で色のない街のように感じた。これからどうやって特色を出して行くのかが都市間競争で勝ち残っていく鍵になるのだろう。
大阪でも近代的で便利な梅田よりも、コテコテの大阪色が出ている道頓堀の方が外国人観光客に圧倒的に人気がある。グローバル化の時代の街づくりは、ローカル色を出した方が競争力が高まる気がした。
あと強く感じたのは、記録に必死になるより、色んなことを感じる旅の方が楽しいということだった。
訪問日 2020年1月
★おまけ(大阪に帰ってきて感じたこと)
*街中がとても静か
*その割に駅と電車のアナウンスはすごくうるさい
*電柱が多い
*道路が平べったくない(かまぼこ型になっていて水溜りができないようになっている)
(終わり)